フラッシュが照らす車内の私性|Andrew Bush『Drive』とÓscar Monzón『KARMA』

フラッシュが照らす車内の私性|Andrew Bush『Drive』とÓscar Monzón『KARMA』

車が、単なる移動手段ではなく、ひとつの「部屋」のように機能していた時代を感じる2冊。

ひとつは、Andrew Bush『Drive』。1989年から1997年にかけて、ロサンゼルスを中心にアメリカ各地で撮影されたシリーズです。Bushは自身の車にカメラを取り付け、並走しながら道路を走る人々の姿を捉えています。ほとんどのドライバーは撮影されていることに気づいておらず、そのため写し出される表情は驚くほど無防備。

同じ構図でありながら、一枚ごとに異なる車、人物、光、速度、空気が立ち現れてきます。車体の色彩や金属の反射、窓越しに見える風景にも強く惹かれます。今見ると、アメ車や当時のポルシェの佇まいにも独特の魅力があります。そして何より印象に残るのは、移動中の人々の、ごく日常的で私的な時間です。

もう一冊は、Óscar Monzón『KARMA』。2009年から2013年にかけて、マドリードで制作されたシリーズです。こちらもまた、ドライバーたちに気づかれないよう撮影されています。車という閉ざされた空間が、公共空間の中に生み出される極めて私的な領域であること──いわゆる「ボディー・カー(Body Car)」の概念を思い起こさせます。Monzónは、その境界を侵犯するかのように、強烈なフラッシュによって運転者たちの姿を照らし出す。

どちらの作品にも共通しているのは、車という存在を通して、人間の無意識や孤独、都市の距離感を浮かび上がらせているところかもしれません。フラッシュによって照らされた車体や風景の質感も印象的です。

『KARMA』は現在販売中。気になる方はぜひチェックしてみてください。

商品ページ
KARMA by Óscar Monzón|文福

JOURNALに戻る