日本の写真集を知るための3冊
写真集の世界を辿っていくと、
有名な作品の周辺に、
まだ知られていない本が無数にあることに気づきます。
地方の小出版、自主制作、限定本。
短い期間だけ存在した出版社。
展覧会にあわせて作られた小冊子。
写真集は、美術作品であると同時に、
印刷文化であり、流通であり、
個人の蒐集の歴史でもあるのだと思います。
今回紹介する3冊は、
どちらかというと、
自分が写真集を集め始めた頃に
知っていたらよかったと思う本たちです。
別冊太陽スペシャル『写真集を編む。』 / 平凡社

写真評論家の鳥原学、畑中章宏らによる、
日本の名作写真集100選を中心に構成された特集。
この本の面白さは、
作品紹介だけでは終わらないところにあります。
編者のインタビュー、
写真集が買える場所、
本づくりの背景なども掲載されていて、
「写真集文化」そのものが見えてくる。

写真集は、
写真家だけで成立しているものではなく、
編集者、
デザイナー、
印刷所、
本屋、
蒐集家、
読者など、
さまざまな人の手を通って残されていくものなのだと感じます。
雑誌でありながら、
かなり濃い内容の一冊です。
『写真集の本』/ カンゼン

飯沢耕太郎・打林俊 著/中村善郎 編
明治期から2000年代まで、
日本の写真集662冊を紹介した一冊。
各作家ごとに代表的な写真集が数冊ずつ紹介されていて、
評論家らしい短いテキストも添えられています。
その一言によって、
それまでとは少し違う見方が開けることもあり、
写真集を読む入口としても面白い本です。

ページをめくっていると、
「こんな写真集が存在したのか」
と思うことがたびたびあります。
有名作家を体系的に学ぶというより、
まだ知らない写真集へ出会うための本。
実際に探したくなる本が増えていく、
危険な本でもあります。
『The Japanese Photobook, 1912–1990』 / Steidl

写真集コレクター、マンフレッド・ハイティングによって企画された、
海外から見た日本写真集史の重要書。
日本の写真評論家・金子隆一による序文も添えられており、
日本に写真技術がもたらされた時代から、
写真芸術社、新興写真、報道写真、
PROVOKE、アングラ、コピー文化など、
日本写真の流れを写真集という形式から辿っています。

単なる作品集ガイドではなく、
戦後日本の印刷文化やデザイン史として読めるのも面白いところ。
海外で日本写真集が高く評価される背景を知る入口としても、
非常に重要な一冊だと思います。
現在ではなかなか手に入りにくくなってしまいましたが、
自分自身、今でもたびたび参考にしている本のひとつです。
『写真集の本』や『写真集を編む。』は、
現在も新刊書店で入手可能です。
日本の写真集に興味がある方は、
ぜひ手に取ってみてください。
写真集そのものだけではなく、
その周辺に広がる文化の面白さも、
少し見えてくると思います。